痔核の硬化治療ALTA・PAO

痔核の硬化治療 ALTA・PAO

痔核の「硬化治療」とは、内痔核に薬剤を注射して痔を硬くし(硬化),小さくする治療法です。
小さくすることで、「出血や出っ張り」が無くなります。欧米では1800年代後半から様々な薬が使用されて来ましたが、副作用がかなり有ったので改善を積み重ねて来ました。 現在本邦で使用されている薬剤(硬化剤)はアルタ(ALTA)とパオ(PAO)です。
ALTAは新しい(本邦では2005に認可)強力な薬であり、従来手術が必要とされた痔核の半数以上がALTA治療で済むようになりました。「画期的」な治療法です。しかし、注射後に痛みや発熱、出血などが起こることがあります。また腎臓の悪い人には使用できないので、事前に血液検査が必要です。治療は予約となります。
PAOは比較的古くからある(欧米では1900年代後半から)治療法で、通常は痛みも発熱も起こりません。簡便な治療法で、初診時でも適応があれば行えます。しかし、あまり大きな痔核は治療出来ず、ALTAほど強力ではありません。
それでも、座薬や軟膏に比べはるかに効果があります。迅速対応できる楽で効果的な治療法です。

ALTA治療(別名:ジオン治療)

今、ほとんどの痔核(イボ痔)は手術をしなくても(切らなくても)治るようになりました。
「新薬アルタ治療」が登場したからです。
勿論、保険医療として公式に認められています。
アルタはイボ痔治療の画期的歴史的な発見です。
多くの人が
「イボ痔は切らないと治らない」「入院しないと治療できない」
等と思い、肛門科受診をためらっています。

しかし今、「アルタ治療」が登場し、イボ痔の多くが手術をしなくても治るようになったのです。もちろん、入院もいりません。高額な自費を払う必要も無いのです。「仕事を長期に休む必要もありません」
アルタ治療は保険診療として認められていますから、1回5,000円から15,000円(自己負担率により)くらいで済んでしまいます。
診察や治療の時の格好が恥ずかしいと誤解されることが多いので説明します。治療の時の体位は当院の通常の肛門診察の時と同じで、体の右側を下にして、両膝をかかえ込んだ型で、割合に気楽です(肛門科受診を参照)。
実際に受診された患者さんの具体的な例を紹介します。
まず、他院で入院手術と言われたのに、手術の必要は無いし、極端な時にはアルタ治療も不要。古くからあるイボ痔の硬化注射薬PAO(Phenol Almond Oil)で十分な事もよくあります。実際に他院で「イボ痔ですから手術しましょう」
と言われた方の半数以上がアルタで治療でき、満足されて治療を完了しています。
我が国で痔核治療薬としてアルタが保険診療で認可されたのは2005年です。

痔核の硬化治療 ALTA・PAO

上図(痔核の治療方法別件数)のようにALTAの無かった2003年の当院の痔手術治療実績は、痔核が260例、痔瘻が81例(計341例)でした。しかし、2005年にALTAが登場し、2012年では痔核手術が101例と激減。これは従来手術が必要とされた他の痔核患者の273人はALTAで治療出来たからです。
つまり、以前に手術が必要とされた痔核の約3/4がALTAで治療出来、手術不要なのです。内痔核の他に外痔核や皮膚の垂みが有るものが手術と成りました。
しかし、痔瘻は依然として手術が必要であり、手術件数が92例と増えています。
ALTA登場前は、一般的に痔手術件数は「痔瘻1」に対して「痔核3~4」でした。今では、当院では痔核と痔瘻の件数に余り差が有りません。ALTAで治療出来、手術の必要のない痔核は手術しないからです。当然のことです。

さて、これからアルタは①「どのような薬」②「どのように治療する」③「効果と副作用」はという3つについて説明します。
アルタは硫酸アルミニウムカリウム(みょうばん)とタンニン酸(Alminium potassium sulfate hydrate・Tannic Acid)を主成分とする水溶液なので、ALTAと呼ばれます。みょうばんとタンニン酸の主な効果は収斂(しゅうれん)作用です。収斂作用とは「皮膚や粘膜のタンパク質に作用して、その部分を縮めてしまう」ことです。
要するに、イボ痔に注射すると「イボ痔が縮んで小さくなる」ということです。

1個の痔核の4か所にアルタを注射します(総量は約10ml)。下図(アルタ治療)のように注射は図の番号順の部分(①→②→③→④)に行います。注射直後に、注入部をマッサージして薬を十分にイボ痔にいきわたらせます。治療は15分位です。「四段階注射法」と言い、注入方法が少し難しく、アルタ治療を行う医師には特別な資格が必要です。
アルタ治療により、イボ痔は数日で縮んで小さくなり、脱出や出血が無くなります。効果は手術とほぼ同程度ですが、治療後は手術と比較にならないほど楽です。

アルタ治療

アルタ治療
治療の副作用としては、「痛み」「発熱」「極めてまれに肛門狭窄や肛門周囲膿瘍」等が起こることもあります。アルタ治療は、1回に痔核1個のみの治療が楽で安全です。
治療当日に痛み止めの薬(鎮痛解熱剤)を渡しますが、これを実際に服用されるのは10人中2~3人であり、しかもほとんどが1回のみの服用で済んでいます。しかし、治療翌日は自宅療養が安心です。

最後にアルタ治療では治療出来ない痔核についてお話します。
アルタ治療は内痔核の治療法であり、内痔核に大きな外痔核を合併している場合などでは、手術あるいはアルタ治療と手術を組み合わせた治療が必要です。肛門の皮膚の垂みなどは適応外です。また、腎機能障害や局所麻酔薬にアレルギー反応がある人、前立腺の放射線治療を行った人、潰瘍性大腸炎で治療中の人等もアルタ治療は出来ません。これらは自己判断では難しいので、心配な人は気軽に相談にいらしてください。

[参考]アルタは中国の「消痔霊」という薬を日本で改良したものです。北京の「史兆岐先生が1977年に「消痔霊」を開発し、中国では10万人以上にこの治療が行われ、99%の人に効果が認められております。

痔核のPAO(パオ)治療

内痔核にPAO(Phenol Almond Oil)と呼ばれる薬剤を注射する治療法です。これはphenolをalmond oil に溶かした液体です。比較的古くからあり、我が国では1976年に治療薬として認可されました。
PAOを痔核の粘膜下に注射します(痔核の静脈内には注入しません)。これで痔核となっている太くなった痔静脈は(周囲の炎症反応により)圧迫閉塞され、痔の出血は急速に止まり、痔は小さく成ります。さらに痔核は線維化し、硬化します。注射の方法はALTAのようには難しくありません。
治療時に注射による痛みは無く、痔核の出血や出っ張りの治療にはかなり効果的です。外用薬(座薬、軟膏)よりはるかに有効です。ただし、余り大きな痔核には不十分です。この場合ALTAか手術治療が必要です。

ALTA治療(別名:ジオン治療)

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