痔核(ジカク)(いぼ痔)

イボ痔と呼ばれており、主に肛門の血管(静脈)のふくらんだものです。

痔核のできる部位によって、内痔核と外痔核に分けられ、内痔核は程度によって I 度~IV度に分類(Goligherの分類)されます。症状は出血、出っぱり、痛みですが、痛みがないことも多いです。
痔核のできる主な原因は、人間が完全直立歩行であることにあります。

人間は、直立した生活をするために、肛門がいつも心臓より下になり、重力や腹圧がかかって、肛門の血流がうっ血(静脈血が心臓に戻ることを妨害され、妨害された部位より手前が膨張してしまう。下図)し、肛門の静脈がふくらみやすいのです。

さらに慢性便秘、飲酒、力仕事、立ったままや座ったまま、妊娠等の要因が加わると悪化します。治療の必要のないものまで含めると、50才以上の人の50%に痔があるといわれています。

内痔核の治療は、I 度のものは座剤や軟膏、II 度では硬化剤(PAO:Phenol Almond Oil)注入療法等、III 度~IV度では根治手術です。しかし、実際には内痔核は外痔核を合併し、内外痔核の形をとるものが多く、それぞれに応じた的確な治療が必要です。
また最近では「ALTA(ジオン)」と言う硬化剤注入療法も行われるようになり、Ⅲ度~Ⅳ度でも手術をせずに治療出来るようになり、驚くほどの効果をあげています。従来「手術」と言われていた脱肛の約3/4は「ALTA注治療」のみで済むようになりました。

痔核(ジカク)(イボ痔)

内痔核と外痔核

肛門には歯状線とよばれるものがあり、これは肛門上皮と直腸粘膜の境界線です(下図)。
この歯状線より上(直腸側)に発生する痔核が内痔核、下(肛門側)に発生するものが外痔核です。

もともとこの部分は静脈叢(ジョウミャクソウ)とよばれる、静脈が網の目のように密集した部位があり、上痔静脈叢がふくらんでできたのが内痔核、下痔静脈叢から発生したものが外痔核です。

内痔核の発生する部位には痛みを感じる神経がないために、出血があっても痛くはありません。しかし、外痔核の部位には痛覚があり、大きくなれば痛みを伴います。

内痔核と外痔核

内痔核の程度

内痔核を、程度により I ~ IV 度に分類してあります。

I 度 痔核を認めるが脱出(肛門から出っぱる)しない。
II 度 排便時に脱出するが、自然に肛門内にもどる。
III 度 排便時に脱出して、自然には肛門内にもどらない。
しかし、用手的(指や手で)肛門内にもどすことができる。
IV 度 脱出したままで、肛門内にもどすことができない。

痔核の治療

治療の種類

  1. 座剤
    現在もっとも広く使われており、市販薬となっているのもいくつかあります。
    主な成分は消炎鎮痛剤で、ほかに止血剤や抗菌剤等を含むものがあります。ステロイドを含むものの長期使用は避けるべきです。
  2. 注射療法
    内痔核に薬液を直接注射して治療する方法で薬液によりPAOとALTAの2種類があります。

    ALTAについては別頁を参考にして下さい。 ALTAはこちら>>
    PAO については別頁を参考にして下さい。 PAOはこちら>>

  3. 結紮(けっさつ)療法
    II~III度の内痔核を縛って取る方法です。ゴム輪で縛る簡単な方法もあります。
  4. 焼灼(しょうしゃく)療法
    痔核を焼いて治療する方法です。焼き切る方法のほかに、最近ではマイクロウェーブを使って痔核を凝固(かためてしまう)する方法も開発されています。
  5. 冷凍療法
    痔核を凍らせて取る方法です。痛み・腫れをともなうことがあり、分泌物も多く、気持ちが悪いのであまり行われません。
  6. 手術療法
    よく知られた手術方法としては、ホワイトヘッド(Whitehead)氏法とミリガン-モルガン(Milligan-Morgan)氏法があります。
    現在広く行われているのは、ミリガン-モルガン氏法の改良法で、(粘膜下)結紮切除半閉鎖法です。

結紮切除半閉鎖手術

結紮切除半閉鎖法では、痔核に流入している動脈をはじめに結紮(縛る)し、つぎに肛門の皮膚を2~3cm切離して、この皮膚と痔核をひとかたまりにして切除します。
切除後の創部(傷)は内痔核のあった付近の粘膜と肛門上皮は縫合閉鎖(縫い合わせ)、皮膚と皮膚に近い部位の肛門上皮は、開放創(切り開いたままの傷)とします。
つまり、痔核切除後は、肛門の奥の傷は縫い合わせますが、皮膚側(外側)の傷は縫いません(下図)。縫わない方が、術後の痛みが少なく、傷も確実に治りやすいのです。

結紮切除半閉鎖手術

ホワイトヘッド氏法手術

ホワイトヘッド氏法は、痔核のある部位の肛門上皮と粘膜を、全周性(環状)に切除し、縫合する方法ですが(下図)、手術数年後の合併症が多く、現在ではめったに行われません。むしろ、ホワイトヘッド氏法による治療後の肛門の変形に対して、「ホワイトヘッド肛門」という病名があるくらいです。

ホワイトヘッド氏法手術

ホワイトヘッド氏法手術

以上のように、痔核の程度により、それぞれに的確な治療法があります。専門医に相談されてから、治療方法を決めるのがよいでしょう。

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