胃内視鏡検査(胃カメラ)について
すでに経験された方が多いと思いますが、簡単に説明いたします。
口からやわらかい管を入れて、「胃」を検査するものです。管の先端に小さなカメラがついており、「胃カメラ」ともよばれます。
食道・胃・十二指腸
胃カメラで検査するときには、”食道“も”十二指腸”も調べています。図のように、内視鏡(胃カメラ)は食道を通り、胃に入り、さらに奥の十二指腸の一部まで到達します。
したがって、胃のみではなく、食道も十二指腸も調べているのです。
なぜ”胃カメラ“を受けるのが大切なのでしょう
胃カメラのおもな目的のひとつは、胃癌や食道癌からあなたを守ることです。早期発見すれば、すべての方が助かるのです。
もうご存知でしょうが、現在の日本人の死亡原因の第一位は癌(正確には悪性腫瘍)です。3人に1人は癌が原因で死亡にいたっています。
その癌の中でもっとも”患者数“が多いのが”胃癌”です。ところが”死亡者数“となると、もっとも多いのは胃癌ではありません。”癌患者数”と”癌死亡者数“は違うのです。
その理由は、「胃癌になっても、治療すれば助かることが多い」からです。胃癌が恐ろしい病気とされたのは過去の話。現在、わが国の胃癌患者の半数は早期発見され、治療ですべて助かります。「早期胃癌は治療ですべて助かるのです」。
また、早期癌の時期を越えてしまった進行癌でも、その半数の方は助かります。
このように、胃癌になっても助かりやすい理由の一つは、「胃の健診が発達している」からです。わが国の胃健診は、世界最高級レベルです。
胃の健診には“胃カメラ””X線(バリウム透視)”“血液(ペブシノーゲン)“等がありますが、もっとも精確・確実なのが“胃カメラ”です。
胃カメラを受けるときの大事な注意
胃カメラを受けるときの3つの大事な注意を申し上げます。
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まず、「熟練した医師を選ぶ」
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つぎに「苦痛のない、楽な検査を行う病(医)院を選ぶ」
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必ず「ハイビジョン(HV)胃カメラで検査を受ける」
以上の3点について、説明します。
熟練した医師
内視鏡検査では、明らかに医師による技術の差がありますので、検査の上手な医師を選ぶべきです。
胃や食道の早期癌は、その形、色や部位によっては発見しづらく、見落とされてしまうことが少なからずあります。技術的な差はその発見率の差になります。
選択するときの参考の一つとして、医療関係者(医師、看護師等、病(医)院関係に従事している人たち)が、自ら患者として受診しに行くような医師が安心でしょう。
苦痛のない、楽な検査を行う病院(医院)
病(医)院のシステムや構造によって、検査が楽か否かの違いがあります。
一般的に、「胃カメラは飲み込むのが辛い・辛そうだ」と思われ、時には「以前に一度受けてみたけれど、辛くて検査できなかった」といわれることもあります。
しかし、鎮痛剤と鎮静剤を使用すると、ウトウトとした軽い居眠り状態、あるいは眠ってしまった状態で検査が終了します。鎮痛剤や鎮静剤による軽い麻酔をしての検査はとても楽です。
検査後の(当院の)実際の感想として、「アレー、もう終わったんですか!」「コレカラ検査ですか?」「本当ハ検査して無いんじゃないですか?」等といわれます。
しかし、鎮痛・鎮静剤を使用した場合には、検査後に少し(30~60分位)ベッド上で休んでいる必要があります。したがって、検査後に休むための設備を完備した病(医)院を選ぶとよいでしょう。
この、苦痛のない、楽で静かな検査には、もうひとつよいことがあります。
「静かで、冷静沈着に行う検査は、小さな病変でも発見しやすい」のです。
苦痛の伴う、バタバタと騒がしい検査では、小さな病変は見落とされやすくなります。
日常生活や事故現場等でも、物を探すときは、静かに落ち着いて行う必要があるのと同じことです。
ハイビジョン(HV)カメラ
今、日常社会の中で、ハイテク(先端科学技術)の進歩は強烈で、目覚しいものを感じます。
内視鏡にも、このハイテクが取り入れられているのをご存知ですか。
HV胃カメラが登場したのです。“従来の胃カメラ”と“HV胃カメラ”の違いをテレビにたとえてみましょう。その違いは、地上デジタルハイビジョンテレビとアナログテレビ、あるいはそれ以上のものがあります。HV胃カメラの画像は素晴らしく鮮明です。あなた方の健康を守る為に、HV胃カメラを使うのは当然のことなのです。実際の写真で比較すると、このようになります。
もっとも、テレビ放送では、アナログTVはもう終了してしまい、地デジTVに代わりましたが。
ハイビジョン(HV)胃カメラと従来の胃カメラの実際の違い
Before
こまかいものが確認できず、筆で描いた絵のような印象です。
After
鮮明なので、細い血管や微かな胃炎(小さな赤い部分)が見えます。
この鮮明さにより、以前では発見できなかったような、小さな、早期の病変が発見できるのです。
早期発見すれば、内視鏡のみで治療ができることが多いのです。
早期の胃癌や食道癌は“シミ”とか“マダラ”のようなものです。ゴツゴツした赤い、いかにも悪性の癌のような形をしていません。また、ポリープや潰瘍のように発見しやすい形でもありません。
この“シミ”や“マダラ”の有無をHV胃カメラで真剣に確認するわけです。形の変化ではなく、より早期に色の変化を探すのです。たとえが悪いかもしれませんが、家庭のテレビにたとえると、「従来のアナログテレビでは見えなかったような顔のシミでもHVテレビでは見えるようになった」ということです。
このシミが見えることこそ、早期の胃や食道の癌の発見につながります。
胃カメラを受けた結果、何の異常がなくても、決して損はしません。ひとつの確実な安心が得られることになるのです。
さて、ここで最近話題となり流行りつつある経鼻(鼻の穴から挿入する)胃カメラについて解説しておく必要があると思います。
残念ながら経鼻胃カメラは内視鏡が細いために、先端のカメラが小さく不鮮明な画像です。早期の胃や食道の癌の発見には向いていません。
当院にも経鼻胃カメラはありますが、特殊なとき(年に数回)以外は使用しません。今後器械の改善はされていくでしょうが、現段階では、早期発見には経口(従来通り口から挿入する)HV胃カメラが、明らかに信頼できます。
また、当院では胃カメラは苦痛がないので、来院される患者さんが経鼻胃カメラを希望されることは、まずありません。