大腸癌健診における便潜血検査と大腸内視鏡検査

大腸癌健診における便潜血検査と大腸内視鏡検査

多分以下のような心配があり、あるいは一般健診の一部として“便潜血検査”を受けられたと思いますが、簡単に説明します。

便潜血検査を受けた患者さんからこんな悩みで相談されました

  • 最近では大腸癌が増えて胃癌が減っているらしい。
  • 念のため大腸癌検診を受けた方が良いかな。
  • 今、日本人は長生きだ。健康な長生きのためには、なるべく健診は受けておくべきだな。
  • そこで便潜血検査を受けたら、陽性と言われた。
  • 大変ダ―、大腸癌になっているのかな?
  • 2次検査を受ける必要があると医者に言われた。何するんだろう?
  • バリウムとか内視鏡があるらしいけど、何が良いのかな?
  • でも、大腸の内視鏡検査は苦しくて辛いと言われたことがあるな―。
  • 検査して大腸癌があったら死んじゃうのかな?
  • なんて言ったって癌ダカラナ―。
  • 大腸癌の予防をしておけば良かったな―。
  • いまからどうすればいいんだろう?

(以上の心配についてお答えします)

まず大腸癌はあまり怖くない癌だということ。癌といってもその怖さはピンからキリまで。大腸癌は大悪党ではありません。
今回「便潜血陽性と言われたのは大腸内視鏡検査を受ける良いきっかけを得た」と思って下さい。

大腸内視鏡検査を数年に1度くらい受けている人には「大腸癌なんて怖くないのです」

大腸癌が怖いのは大腸内視鏡検査を受けていない人達です。検査を受けていないことは怖いことです。

今あなたは「大腸癌から身を守る検査が受けれるようになりました」
大腸癌という 外敵悪党の侵入者から確実に身を守るための検査を受けるきっかけを得たのです。このきっかけを大事にしてください。

次に具体的に便潜血陽性の意味について説明します。

さて、便潜血陽性は 何を意味するのでしょうか?それは「肉眼では分らないほど微量の血液(潜血)が便に含まれている」という事で、
消化管(食道、胃、腸、肛門)のどこかに出血がある可能性を意味します。

この見分けられ無いほど微量の出血(潜血)を起こす代表的な病気が大腸癌や大腸ポリープです。
しかし、便潜血陽性であっても大腸癌があることはまれです。もし癌があったとしても、
便潜血検査で見つかるような大腸癌は通常はひどい癌ではありません。

これらのほとんどは治療で完治します。

自覚症状(自分で気づく腹痛、出血、便通の変化、腹部膨満感など)の無い大腸癌は怖い癌ではありません。

大切なことは、まず検査を受けることです。大腸癌という敵から身を守る検査を受けるべきです。検査を受けて何も異常無くても良いのです。
確実な安心が得られ、不安の無いスッキリ爽やかな毎日が過ごせます。

それでは便潜血陽性の精密検査(2次検査)は何を受ければ良いのでしょうか?

間違いなく大腸内視鏡検査です。議論の余地などありません。
しかし、大切な注意が有ります。必ず検査の上手な医師を受診すること。上手な医師でないと 、この検査はとても辛く苦しくて十分な観察が出来ません。
さらに病変の見落としも多く、医療事故も起こりやすいのです。時間とお金をかけたのに、なんのために検査を受けたのか分からなくなってしまいます。
上手な医師を探して 検査を受け 、スッキリ安心の毎日を過ごしましょう。

(以下は少し詳しい話です)

一般の集団検診の報告では,便潜血陽性になるのは受診者1000人中の50人ほどです。さらにそのうちの2~3%の1~2人に大腸癌があります。
ここで注意が必要です。大腸癌があれば全て陽性と成るわけではありません。
大腸癌があり便潜血反応陽性と成るのは(2日間連続便検査法でも)進行癌の90%、早期癌の50%です。
要するに、大腸癌があっても進行癌の10%、早期癌の50%は異常無しと判定されてしまいます。
これは怖いことです、安心出来ません。もちろんヒドイ進行癌は無いでしょうが。

 

【当院の結果では】

これは平成28年3月から平成29年9月までに便潜血陽性の2次検査として、当院で大腸内視鏡検査を受けた500名(無作為的な検索による)の検査結果です。
男性275名、女性225名。平均年齢54.8歳(24~95歳)。

【検査結果】癌があったのは12名(2.4%)でしたが、早期癌が5例で進行癌は7例(1.4%)でした。

高度異型腺腫(コウドイケイセンシュ)(癌とは言いきれないが、癌に近く、放置すると間も無く癌になってしまうもの)病変は24例でした。
これらは治療の必要があります。早期癌と高度異型腺腫は合計29例(5.8%)ですが、これらは全て治療で完治します。
しかも、ほとんどは内視鏡で治療でき、開復手術(お腹を切り開く手術)は不要です。

低異型度腺腫ポリ-プは170例(34%)でした。明らかに癌ではないものですが、放置すると年数が経てば癌になるものです。

このポリ-プを治療してしまえば大腸癌には成りません。内視鏡で治療出来ます。大腸癌は予防可能なのです。

癌とは関係ないが便潜血陽性となるような病変は8例(1.6%)ありました。
全く良性のポリ-プがあるのみ、あるいは全く異常が無かったヒトは286例(57.2%)でした。
従って、286例(57.2%)のヒトは便潜血陽性でも大腸癌の心配はありません。

《結論》

便潜血陽性と言われたのはむしろ幸運と思って下さい。大腸検査を受けるきっかけを与えられたのです。

検査しても何もないことが多いし、ポリ-プの段階で発見されれば内視鏡で治療出来、大腸癌を予防できます。
早期癌なら内視鏡治療や手術で完治します。進行癌があることは稀です。

また、便潜血陽性で発見されるような大腸癌は、早期癌ではなくても比較的に初期の癌のことが多く、手術で完治する可能性が高いのです。
問題は便潜血陰性(異常なし)と言われたヒトのことです。

進行癌でも10%のヒトは陰性と判定され、早期癌なら50%が陰性と判定されてしまいます。
内視鏡検査を受ける機会を与えられません。なるべくなら便潜血陰性でも大腸内視鏡検査を受けると安心です。

しかし、検査の上手な医師を探して受診して下さい。

大腸癌なんかに(例えて言えば小悪党でしょうか?)、大切な人生を損なわられてはいけません。大腸癌が大悪党になる前に予防退治して下さい。

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