- 大腸ポリープおよび表面型(表面隆起型・表面平坦型・表面陥凹型)病変
- 大腸ポリープとは
- 大腸ポリープと表面型病変
- 大腸内視鏡によるポリープ切除術(切除は無痛です)
- 大腸内視鏡による粘膜切除術
- ポリープ切除後の注意
- 粘膜切除術の実際
大腸ポリープおよび表面型(表面隆起型・表面平坦型・表面陥凹型)病変
ポリープとはイボ状に隆起した病変の総称ですが、大きさが1~2cmくらいまでのものに使われる病名で、数cm以上もあるものはふつうはポリープとはいいません。
大腸ポリープとは
大腸の内腔に突出したポリープのことです(下図左)。しかし、大腸粘膜の外側(大腸粘膜と大腸壁との間のこと)から発生し、内腔に向かってイボ状に発育する病変は粘膜下腫瘍とよばれ、ポリープとはいいません(下図右)。また数cm以上の大きさのものは“腫瘤”とか“腫瘍”とかいわれます。さらに最近では、表面隆起型とか表面陥凹型とよばれる、イボ状には隆起しない、平坦あるいは表面からくぼんだ陥凹型病変が、癌に変化しやすいこともわかってきました。
大腸癌は主としてこのような大腸ポリープや表面型病変から発生することがわかっております。しかし、すべてのポリープが癌に変化しやすいのではありません。ポリープの細胞の性質により「腫瘍性ポリープ」と「非腫瘍性ポリープ」に分類すると、腫瘍性ポリープが癌になりやすいのです。
腫瘍(新生物ということもあり)は、活発な細胞分裂を繰り返し、どんどん大きくなっていく腫瘤(シコリ)のことです。悪性腫瘍とは癌のことです。大腸の場合は良性の腫瘍性ポリープが癌に変化していきます。したがって腫瘍性ポリープは切除する必要があります。しかし非腫瘍性ポリープは癌にはなりません。従って、癌予防のために切除する必要がありません。腫瘍性ポリープや表面型病変を切除してしまえば、大腸癌は100%近く予防できます。また、大きさが1cmを超えるようなポリープでは良性腫瘍の中の一部に癌細胞が存在することもありますが (cancer in adenoma)(下図)、ほとんどの場合内視鏡で完全に切除治療できます。
大腸ポリープと表面型病変
実際のポリープ
- Ⅰs(無茎性)
- Ⅰsp(亜有茎性)
- Ⅰp(有茎性)
実際の表面型病変
- Ⅱa(表面隆起型)
- Ⅱb(表面平坦型)
- Ⅱc(表面陥凹型)
- Ⅱa+Ⅱc病変
- 色素散布
Ⅱa+Ⅱc病変に色素をかけて、輪隔を明瞭にしたもの - Ⅱa集簇(しゅうぞく)
Ⅱaの病変がいくつかあつまったような形で、大きくて表面がデコボコ(凹凸不整)している。早期癌です。 - 特殊こう(NBI)による観察
Ⅱa集簇病変を特殊光(NBI)で観察。病変部は濃く映し出され、輪隔が明瞭になります。
大腸内視鏡によるポリープ切除術(切除は無痛です)
実際に切除するところ
- 1
- 2
- 3
大腸内視鏡による粘膜切除術
ポリープ切除後の注意
内視鏡によるポリープ切除は、熟練した医師が行えば安全なものですが、まれに切除時や切除後に出血や穿孔(腸に穴が開いて破れてしまうこと)が起こることがあります。出血は切除するポリープの個数や大きさにもよりますが、数百人に1人発生します。この場合、通常は内視鏡にて止血できます。穿孔はきわめてまれであり、数千人に1人の発生頻度といわれておりますが、当院では、ポリープ切除により穿孔を起こしたことがありません。
穿孔を起こした場合は、緊急開腹手術(おなかを切り開く手術)を行い、穿孔部位を縫い合わせてふさぐ必要があります。出血は切除後5~8日後、穿孔は4日以内に起こりやすいものです。
ポリープ切除後の出血や穿孔の予防のために、切除後には以下のことを守っていただく必要があります。
- 術後10日~2週間は運動や力仕事をしないでください。
- 術後10日~2週間は旅行をしないでください。
- 術後1~2週間はトウガラシ、カレー等の刺激物を食べないでください。
- 術後1~2週間はお酒等のアルコール飲料はひかえめにしてください。小量ならだいじょうぶです。
- 術後20日間は海外旅行を避けてください。
粘膜切除術の実際
- 表面型病変Ⅱa
- 生食を注入コブをつくる。
- スネアーにて切除する
- 切除直後
- クリップを使用して切除部の傷を寄り合わせ、閉鎖する。